(205年5月25日)

実験「演奏会場の残響時間の効果」の実験音は、Aが原音声で、Bは、それに0.05秒のエコーをかけたもの、Cは中ホールを、Dは大ホールを模擬する残響をつけたものである。わずかだが、AよりB、C、Dの方が上手に聞こえるのではないだろうか。カラオケでエコーをかけると上手に聞こえると言われる。これは合唱曲でも同様のようだ。

残響時間は、音を止めた後それが聞こえなくなるまでの時間だ。詳しくは参考文献[1]を見ていただきたい。コンサートホールでは1.7~2.3秒、会議室では1.25~1.5秒が最適と言われている[2]。コンサートなどでは残響がある方がよく、話し声では、残響がない方がいいというわけだ。残響があると、話し声にエコーがかかり聞き取りにくくなるかからだ。沖縄県南城市佐敷にあるシュガーホールでは残響時間を変えることができ、コンサート用は1.7秒、講演用は1.3秒にセットできる[3]。Aの音声は、残響時間が1.3秒である那覇市内の小劇場で録音したものだ。そこは、歌唱よりむしろ演劇などに最適な会場だったようだ。

残響は、主として音のエコー(反射)によってできるので、残響時間を長くするようにエコーをつけたのがBだ。残響(エコー)は、いい音楽に聞こえるようする働きがあるようだ。

ただしこれは、ビブラート[4]と同様な「音程のずれに対して寛容にする効果」のようである。つまり少しずれていても許容されるようになる効果と思われる。合唱では、ビブラートはうなりを生じさせるので、付けないほうがいいと言われる。同様に、残響(エコー)がなくてもいいように、音程・長さを正確にするようしっかり練習すべきである。

(高良富夫:音・話ことばの実験室所長、琉球大学名誉教授、工学博士、日本音響学会終身会員)

文献

[1]高良富夫「音声言語処理入門」(2024)研究社, pp. 69-72.

[2]日本建築学会編「設計計画パンフレット4 建築の音響設計」彰国社.

[3]中村 透「音楽ホール・芸術・地域の胴体想像に関する研究 ーシュガーホールを題材としてー」琉球大学学術リポジトリ, 2021年12月15日.

[4]スンドベリ著, 寺西, 大串, 宮崎訳「歌声と歌唱の知覚」, 音楽の心理学(上)(1987) 西村書店, p. 106.

参考:この小論を書くにあたって沖縄県内のホール8か所の残響時間をWebで調べた。その結果、3か所については記述が見つかった。他5か所については見つからなかったが、検索用生成AIは数値を答えていた。これらはデータねつ造の可能性がある。気をつけていただきたい。

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