(琉球新報2025年3月21日ティータイム)
県内合唱団の定期演奏会を聴きに行った。無伴奏混声合唱曲「鉄腕アトム」(詞:谷川俊太郎、曲:高井達夫、編:信長貴富)が最後に演奏された。私は、日本初のテレビ・アニメ番組「鉄腕アトム」の初回を観てわくわくした世代だ。
「空をこえて、星のかなた♪」合唱曲は、テレビの主題歌とは違い、ゆるやかで荘重に始まった。雄大な銀河、さらにそれを含む大宇宙の姿が目に浮かんだ。
「心やさし科学の子♪」アニメと同じ弾む調子に変わった。21世紀の科学、科学により拓かれる豊かな未来。私は、小学生のころに想像した科学への憧れがよみがえり、目がうるみ60年前にタイムスリップした。
アトムのようなロボットを発明する科学者になりたかった。久茂地小学校近くの丘の上に建つ子供博物館に足しげく通った。そこには、プラネタリウムと天体望遠鏡、有人人工衛星のポスターがあった。人類が月面に降り立つ5年前のことだった。幸運なことに、その後私は人工知能を研究する科学者になった。
歌はつづく。「心ただし科学の子♪」、「心はずむ科学の子♪」、「町角に、海のそこに、今日もアトム人間まもって♪」これは人類への貢献を表している。
科学は進展し、原子力、コンピュータ、遺伝子操作、情報通信、人工知能が実現した。だが、原子爆弾、公害、気候変動、原発事故、フェーク情報とその影の面も現れた。
科学は、はたして人類の幸福に貢献してきたのだろうか。人類のため明るい未来を切り開くために、これからも考え何らかの形で寄与したいと思った。
新聞では「丘の上に建つ子供博物館」ー>「沖縄少年会館」と誤まって書き換えられています。以下の論文には、写真もあります。
子供博物館:1954年~1966年https://okimu.jp/userfiles/files/page/museum/issue/bulletin/hakukiyou16/07_Hokama.pdf
沖縄少年会館:1966年~2012年https://sumai.okinawatimes.co.jp/commons/special/detail/11237