どんどんレポートを送ろうと思っていましたが、なかなか忙しくて書く時間がとれませんでした。ここピッツバーグでは、すでに紅葉の美しい季節となっています。今日はカメラをもって大学周辺を撮ってきました。
さて、カーネギーメロン大学(CMU)の計算機環境などについて書いてみたいと思います。
CMUの計算機科学部の基本オペレーティングシステムはmachです。これはCMUで開発されたUNIX後継のオペレーティングシステムで、分散処理、共有仮想記憶を特徴とし、UNIXと完全な互換性があります。私が使用した感じでは、UNIXとまったくかわりませんが、他のワークステーションの資源を自在に利用できるところが違うように思います。
計算機科学部(School of Computer Science;情報科学大学院)の大部分の人はIBM-RT、DECステーションおよびSunなどののようなハードウエアでMach-UNIXの資源を利用しています。音声関係の研究室にはNEXTマシンも結構あるようです。計算機科学部だけで500台以上の計算機があるそうで、計算機科学部に属する教官、職員、大学院生の数が400人くらいですから、一人一台以上の計算機があることになります。ただしこれは、ワークステーション、ファイルサーバ、プリンタを含んでいます。プリンタの数は少なく、ワークステーション数十台に一台の割合のようです。紙を節約する意味あいもあるのでしょうが、後述しますように通信回線が発達していますので、ほとんど紙を使用しないで済むからだと思われます。私が現在使用できる計算機は、研究室内のワークステーション、RISCワークステーション、NEXTマシン各2台と、学内規模のandrewシステムです。
andrewシステムは、大学の創始者アンドリュー=カーネギーにちなんで名付けられたもので、学内規模のワークステーション=ネットワークシステムです。このアカウントをもっていると、学内に分散している120台ほどのandrewワークステーション(DEC3100)を自由に使うことができます。ワークステーションは学内の数カ所に数十台ずつまとめられており、それらの箇所はたいてい24時間オープンとなっています。またそこにはワークステーションとほぼ同じ数のMacintosh IIやIBM-ATなどがあります。全ての学生はこれらのシステムを使うことができます。文科系の学生も含めて約85%の学生が恒常的にこれを学習活動に使用しているそうです。そのほかに、学内では、各個室(事務官、大学院生のofficeを含む)に1台以上のワークステーションかパソコン、端末があり、それらはすべてネットワークで結ばれています。
このように大学院生以上は、一人1台の計算機か端末を使うことができますので、これを利用した電子メールと電子掲示板が日常的に非常によく使われています。
電子メールは学内の事務連絡をはじめ研究室内の連絡にも使われます。例えば、私が電話で、英会話のクラスの参加申込をしたところ、数日して電子メールで、新しいクラスができたことと、その時間と場所を知らせる連絡が来ました。その通知はクラスの全員にいっせいに送られていました。メールアドレスはUNIXコマンドのfingerで調べたのだと思います。
fingerはUNIXコマンドのひとつで、これを使うと、姓名を知っていれば、その人のメールアドレスの他に、現在ログインしているかどうか、最新のメールはいつ来たのか、最後にメールを読んだのはいつか、などが分かります。従って、自分の送ったメールを相手が読んだのかどうかも知ることができることになります。fingerは学内だけでなく、UNIXのネットワークがつながっていれば、外国の人に対しても使うことができます。
学外からの訪問者がきて小講演会などがあると、研究グループの人には電子メールでその通知が届きます。またゼミの開催時間調整、変更など研究室内の連絡にも使われます。これらは、電子メールの同時通報の機能を生かしたものといえます。
CMUでは、同じ研究室に属していても部屋が離れていたり、officeが別のビルであることが多いので、電子メールが有効に使われます。私は、音声データの所在やその仕様などを、研究室の学生に電子メールで聞いています。聞かれた人は、電子メールで答えてきますので、それを後からゆっくり参照することができます。メモをとる必要もありません。特に込み入った内容だと、記録が残るということは効果的です。ソフトウェアや計算機資源などについてはオペレータに電子メールで質問を出すことができます。
電子メールは、読みたいときに読めばいいので、電話のように相手の活動に割り込みをかけるようなことがありません。この点は留守番電話やFAXと同じです。電子メールではさらに、その内容が計算機にすでに入っているので、これを資料やワープロ原稿として再利用できるという特長が加わります。
このように、電子メールは電話と同様、またはそれ以上に仕事の必需品となっているので、私は出勤するとまず電子メールを見るのが日課です。また1日数回、そして自宅からも電子メールを見ています。
自宅では特に、日本語パソコンを通して琉球大学との交信に利用しています。Uさんとの事務連絡に、また大学院生のT君とのゼミにと電子メールは有用です。記録が残り、読みたいときに読めるので便利です。学生の研究報告をゆっくり検討できますし、論文原稿の添削もできます。特に、アメリカと日本では昼夜の時間帯が正反対なので、相手が寝ている間にゆっくり文章を書くことができます。また昼間にメールを書くと、翌日の朝には返事がもらえます。
翻って我が琉球大学電気系学科では、なぜ、このように便利な電子メールがあまり有効に使われていないのでしょうか。UTSの電子メールでは日本語が使えず、学外との交信にも使えないからでしょうか。計算機用電話回線が1回線しかなく、自宅から使いにくいからでしょうか。現在、琉球大学でも大学院生以上は研究費で学術情報ネットワークが利用可能ですし、電気系学科のMSPでは日本語で簡単な電子メールが利用できます。まずこれらを利用してみることが必要かと思います。MSPは電気系学科の学生全員が利用していますから、学生どうしでこの電子メールを利用してみてはどうでしょうか。後述しますように、CMUでは、電子メールとともに電子掲示板が有用に利用されて、これを利用した一種の協力社会が形成されているように思います。
電子メールに関心のある方は、ぜひ学術情報ネットに加入して、私にでもメールを送ってください。加入方法はTさんに聞いてください。学生は研究室の先生にも相談してください。使用料金は、国内は無料で、海外でも1kバイト20円ですから研究費の負担にはなりません。
次回は、電子掲示板と、電話回線を利用した計算機使用などについて書いてみたいと思います。
