こちらピッツバーグでは、11月に入り、ぐっと寒くなり、2、3回雪も降り、最低気温が-11度Cとなることもありました。
さて、CMU(カーネギーメロン大学)の電子掲示板の使用状況などを書いてみたいと思います。
電子メールが個人間の通信および小グループへの通知に使用されるのに対し、電子掲示板は、さらに大きなグループ、すなわち学部や大学全体への通知に使われているといえます。
大学レベルでは約3000の電子掲示板があるようですが、私はまだアクセスしたことがありません。私のいる計算機科学部の掲示板は約120あり、その内容は、学部の公式通知を行うものから研究グループの通知に使われるもの、ある研究テーマについて、または学部構成員の関心事についてディスカッションを行うものまで、さまざまです。遊びに関するものがないようですが、それらは大学レベルの掲示板に置かれているのかも知れません。
その中で最もよく使われているのはcmu-marketと思います。これはキャンパス規模でほとんど全てのものの売買を行うための掲示板です。米国ではガレージセールとかムービングセールと称して、引っ越す場合、持って行かないものを個人の家で売ることがよく行われますが、その通知もよくcmu-marketに出ています。そのほか、ステレオセット、車はもちろんのこと、家の売買まで出ていることがあります。日本の新聞にもリサイクルの欄がありますが、cmu-marketはその電子版といえます。私もこちらへ着いた当時はこれを見て、椅子や台所用品などを買いました。しかし、よくこのようなものを売ったり買ったりするものだと、日本人には思われるほどの、がらくたに近いものまで売買されているのには驚きます。
日本では、中古品といえば自動車くらいで、買うとすればたいていは新品を買うと思いますが、米国では一般に中古品を日本よりもよく利用しているように思われます。これは、米国では終身雇用制ではなく、職場を変えることが多いことにも関係しているようです。すなわち、職場を変えるとともに、広い米国内をしばしば移動します。そこでその都度新品の家庭用品などをそろえるのは大変なので中古品を買うことになるのではないかと思われます。中古品が手軽に手に入ることは、私などのような短期滞在者にとっては好都合です。私は、車と新品のテレビをのぞき、生活必需品であるソファー、ベッド、ドレッサー、机、食卓、鍋や食器類をわずか7万円ほどでそろえ、新生活をはじめることができました。
ところで、こちらへ来てまず私が苦労したことは住居捜しでした。新聞広告を調べ、友人の車で見てまわりましたが、数日決らず、最終的に、私のhostであるStern准教授が電子掲示板apartmentで捜した準一戸建て住宅に決まりました。彼はまず情報提供者に電子メールを送り、家主に電話をして、私をその場所に案内しました。このときの電子掲示板、電子メールの印象が、私がこのレポートを電子メールで書くきっかけになっています。
そのほかのユニークな掲示板としては、japaneseがあり、計算機の日本語環境や日本のメールアドレスなどの情報交換に使われています。japanese以外に外国人の掲示板がないことから、いかに日本人が多く、その活動が活発であるかが伺われます。ちなみに、ピッツバーグには約400世帯の日本人がいるそうで、日本人会の会長は、私のいるロボット研究所の副所長です。
私が最もよく見る電子掲示板は、speech, general, scs, unix-announceです。speechは音声研究グループの掲示板で、訪問者の研究談話会や研究グループの報告会、博士論文発表会の通知、グループの研究設備の変更通知、音声データの所在の問い合わせなどに利用されています。後の3者は、電子掲示板システムを起動したときに必ず現れるもので、scsは計算機科学部(School of Computer Science)の公式の掲示板です。これには、計算機科学部の発展に関する性質の通知や提案が掲示されます。博士論文発表会、講演会、セミナー、デモンストレーションの通知なども掲示されますので、私はこれを見て時々勉強に出かけます。unix-announceはUNIXシステムの公式の掲示板で、ハードウエアとソフトウエアのサポート職員や施設職員からの通知が掲示されます。
generalには計算機科学部の構成員が関心を持つ諸々のことが掲示されます。誰それに子供が産まれて何々と名付けられたとか、大リーグの切符を買ったが行けないので誰か行かないかとか、カルフォルニアに車で行くので一緒に行きたい人は乗っていいよとか、どこそこで無料のlunchがあるとか、見ていると面白いものもあります。ある論文を読みたいので持っている人はコピーさせて欲しいとか、あるソフトウエアを使ってみたいのだがそれに関する情報を、それを捜す方法(pointer)だけでもいいから教えて欲しいというのは最もよく見かけます。
これら電子掲示板、電子メールの使用状況を見るたびに、私は、電子掲示板、電子メールを有効に利用することにより、計算機科学部が善き協力社会を形成していることを感じます。
そこで、このような状況を琉球大学の電気系学科で実現できないものかと考えているところです。カーネギーメロン大学で電子掲示板、電子メールがうまく機能しているのは、アメリカ人の国民性が開けっぴろげであること、計算機科学部の規模が大きいことによるのかも知れません。しかし、電気系学科も学生数では400名程ですし、少なくとも学生の間では、これに近い状況が作れるのではないかと考えます。
次回は、計算機における通信機能、ワークステーションの使用法に関して私見を少し述べ、米国の日常生活の話に移っていきたいと思います。
