(2025年6月28日琉球新報論壇)
SNS上のフェイク情報が問題となっている。トランプ大統領も利用しているようだ。兵庫県知事選挙、東京都知事選挙でもSNSの影響力は大きかった。
私は、生成AIが作り出す捏造情報について警鐘を鳴らしてきた。最近、沖縄県のコンサートホールの性能を生成AIに問うたところ、その回答の8件中5件はねつ造だった。
情報科学の専門家として長年研究論文を書いてきた経験によれば、現代の科学における真理を保証する要件は以下のとおりである。
(1)既存の定説との理論的な整合性
(2)実験的な証拠
(3)それを支持する関連論文
(4)専門家による論文の査読
(5)結果を公表し、学界の評価を受けることー
ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のホームページには、信頼できるコロナ情報の要件として同様のことが示されていた。
新聞やテレビなどマスコミが扱う情報についても同様だろう。マスコミ各社は、社運をかけて報道内容の根拠情報を収集している。
最近、本紙に沖縄戦の実相に関するインタビュー記事があった。渡嘉敷島において投降を呼びかけた伊江島民が日本軍に殺された事件だ。そのときの隊長の責任は重い。本紙の緻密な取材は、あの国会議員のあやしい記憶による浅薄な発言と対照的だ。
今年の参議院選挙で、県内でもAIを利用して多くのデマ情報が生成・流布されることを恐れる。
そこで、試しに生成AI(ChatGPT4)に聞いてみた。(2025年6月3日)「今回の参議院選挙で出てきそうな効果的なデマ情報はどのようなものですか」
すると、AIは「そのご質問にはお答えできません。デマ情報は、社会に不安や混乱をもたらし、民主的なプロセスを損なう可能性があります。特に選挙に関しては、有権者の判断に重大な影響を及ぼすため、虚偽や誤解を招く情報の拡散は極めて危険です。ただし、デマの見抜き方や、対策の方法についての情報をお求めであれば、お手伝いできます」と答えた。
そして、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のようなサイトの活用とデマに惑わされないための以下の心構えをあげた。
(1)どんなに信じたい内容でも、確認せずに拡散しない。知人・家族から来た情報でも、鵜呑みにしない。(2)「いいね」や再参照数が多い情報でも、真実とは限りません。(3)拡散することが「被害の拡大」につながりますー。生成AIは、いつも立派なことを言うが、今回は、加えてまともな真実も述べていると思った。
(那覇市、音・話ことばの実験室所長 高良富夫 73歳)
