(沖縄タイムス2025年12月5日論壇)
2022年秋に登場した生成AIと呼ばれる優れた人工知能(AI)が評判になっている。そのAIが生成する偽りの動画・画像・音声やその著作権侵害などが問題となっている。「生成」AIは、史上初のうそも生成するAIである。AI全般のことではないことに注意されたい。
経産省のガイドラインによれば「生成AIの原理は、テキスト生成AIについていえば、」「もっともらしい文章を作成するものであり、誤った情報が生成される可能性」がある。「その正確性や根拠、裏付けを確認する」必要がある。
文科省の生成AI に関するガイドラインでは、教育への積極的利用については述べられているが、偽り情報に関する記述が少ない。総務省の「生成AIはじめの一歩 ~生成AIの入門的な使い方と注意点~」は、問題点等が分かりやすく整理されている。学校の先生方も、まずは、これを読むことを強くお勧めする。
英BBCなどの最近の調査によれば、生成AIのニュースを巡る回答の6割弱が正確性に問題がある。生成AIのうそについて、私は、これまでに拙著「音声言語処理入門」(研究社、2024年)や琉球新報・沖縄タイムスのコラムで警鐘を鳴らしてきた。その内容は、下記のホームページ「音・話ことばの実験室」に再掲してある。ただし、私が指摘したためか、修正されたものもある。
最近経験した生成AIのうそだ。Microsoft の検索ソフトCopilotに、音楽音響学に関する質問をした。回答が間違っていたので、それを指摘したら、彼は、意味を成さないグラフを出してきた。
Chat GPT5の Scholar GPT(学者GPT)で、試しに「高良富夫氏の琉球語に関する査読(学会審査を通った)論文を探して」と入力してみた。すると琉球語音声の【認識・話者認識】に関する複数の論文を挙げた。これらは捏造だ。【分析・合成】が正しい。
以上の経験も踏まえて、生成AIの使用上の注意点は、以下のとおりである。
(1)自分の知らないことへの回答は、正否を疑うこと。調べ直すこと。
(2)AIに人間の心があると思ってしまうELIZA現象に注意すること。ChatGPTのバージョンが更新されたとき、「私の夫を返して」と訴えたユーザがいた。心を奪われたのだ。
(3)生成AIは、あくまで助手、お手伝いさん、秘書、または執事として扱うこと。
「音・話ことばの実験室」 (QRコード) URL 琉球大学名誉教授 工学博士 73歳
新聞では、副題・(QRコード)・URLがない。見出しは「正否疑い調べ直しも必要」。「琉球新報・沖縄タイムス」は「沖縄タイムス・琉球新報」に。タイムス論壇では、前日、前々日ともAIの話題であった。筆者は、ほぼ同年齢の人。
