(2026年3月6日沖縄タイムス茶飲み話)
著名な随筆家・物理学者、寺田寅彦が昭和初期に書いた随筆に「音の世界」がある。そこには、音に関するいくつかの興味深い話が書かれている。
人間の横顔の額からアゴまでの曲線を連ねて音にすれば、顔を聴き分けることも可能であると書いている。私は40年ほど前、植物中の電流の変化をコンピュータに取り込み、それを音にして交響曲を作る、という海洋博公園のプロジェクトに参加したことを思い出した。
残念ながら、横顔や植物電流のような曲線は、振動でないので、そのままでは音として聞こえない。
だが、これらの曲線を音の高さの変化とみなせば、つまり楽譜とみなせば、音にできる。在職中に琉球大の研究室で開発した、音声合成スペクトル・エディタを使えば、即座にできるのだ。随筆を読んでいるうちに気がついた。
早速、人間の横顔の曲線を使って音を作った。さらに首里城の大龍柱の横顔も使った。人間の横顔は、筆者の写真をトレースして作った。龍の声の音色は、音声学に基づき、阿(あ)形ではア、吽(うん)形ではウとした。その結果、阿形では叫んでいるように、吽形では唸っているように聞こえた。
作った音声は、下記ホームページ「音・話ことばの実験室」に置いたので、聞くことができる。寺田が着想してから93年後、その音を作った。寺田がこの音を聞いたら、「ウ~ア~」と驚きの声をあげるに違いない。
音・話ことばの実験室・工学博士 高良富夫 73歳

新聞では「植物中の電流の変化をコンピュータに取り込み、それを音にして交響曲を作る」、下記ホームページー>QRコードの、置いたのでー>あるので、阿(あ)形・吽(うん)形は添え字、那覇市有り。
